大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(ナ)1号 判決

原告 秋山新平

被告 山梨県選挙管理委員会

一、主  文

原告の訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告代理人は、「被告が昭和二六年一一月二日なした原告の訴願を棄却するとの裁決を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として、原告は、昭和二六年四月二三日施行せられた山梨県北巨摩郡韮崎町議会議員の選挙において候補者となり、有効投票一一五票を獲得し、翌二四日の選挙会において当選者と決定され、同日韮崎町選挙管理委員会から当選証書を受け、現に同町議会議員であるが、同選挙において同様立候補して有効投票一一四票を得て次点者となつた訴外山寺長徳は、右選挙会において無効と決定した投票中有効となるべき投票三票ありとして、同町選挙管理委員会に異議を申立てたところ、同年四月二八日同委員会はさきに選挙会が無効と決定した「パリー」又は「天神町パリー」なる投票を有効と決定し、同年五月二一日これを告示した。しかしながら右決定は違法であるから、原告はこれを不服として同年六月一〇日被告に対し訴願を提起したところ、被告は同年一一月二〇日訴願棄却の裁決をなし、その裁決書は同年一二月一七日原告に交付されたので、原告は右裁決を不服としてこれが取消を求めるために本訴に及ぶと述べ、なお右裁決書の交付に関する被告の主張に対し、右裁決書は原告の住所に配達されたものでなく、韮崎町祖母石の訴外秋山知恵子方に配達されたものであつて、原告は前記昭和二六年一二月一七日同訴外人からその交付を受けたものであると述べた(立証省略)。

被告代理人は、主文同旨の判決を求め、答弁として、原告の主張事実中訴外山寺長徳の異議申立に対する韮崎町選挙管理委員会の決定が違法であること及び原告の訴願に対する被告の裁決書が昭和二六年一二月一七日原告に送達されたことは否認する。その他の事実はすべて認めるが、被告は同年一一月二〇日右裁決書を原告の住所宛に書留郵便物として差し出し、右裁決書は翌二一日原告に配達された。又被告は同年一一月二九日右裁決の要旨を山梨県報を以て告示した。従つて原告のこれに対する不服の訴は公職選挙法第二〇七条の規定により右裁決書の交付を受けた日即ち同年一一月二一日から三〇日以内に提起しなければならない。仮りに右裁決書が右日時に原告に交付されなかつたとしても、右裁決の告示のあつた日即ち同年一一月二九日から三〇日以内に訴を提起しなければならないのに、本訴は右いづれの期間も経過した後に提起されたものであるから不適法である、と述べた(立証省略)。

三、理  由

原告が昭和二六年四月二三日施行の韮崎町議会議員の選挙において候補者となり有効投票一一五票を獲得して当選と決定せられたこと、同選挙において同様立候補して有効投票一一四票を得て次点者となつた訴外山寺長徳が、無効投票中有効となるべき投票三票ありとして、同町選挙管理委員会に異議を申立てたところ、同年四月二八日同委員会は、さきに選挙会が無効と決定した「パリー」又は「天神町パリー」なる投票を有効と決定し、同年五月二一日これを告示したこと及び原告がこれを不服として被告に対し訴願を提起したところ、同年一一月二〇日訴願棄却の裁決があつたことは当事者間に争がない。

そこで、本訴の提起が法定の出訴期間経過後になされたものであるか否かについて按ずるに、市町村議会議員の選挙における当選の効力に関し都道府県選挙管理委員会に訴願を提起した者がその裁決を不服として公職選挙法第二〇七条第一項の規定による訴訟を提起する場合には、訴願人が裁決書の交付を受けた日から三〇日以内にこれをなすを要すると解すべきである。しかして原告本人の供述によると、原告の住所は韮崎町祖母石の地区の端に孤立し部落から約一〇町距つていて、郵便物の配達に非常に不便なところにあるので、原告が昭和一二、三年頃右住所に移住して以来今日まで、原告宛の郵便物は、通常のものは勿論書留又は速達取扱のものでも、すべて部落内の訴外秋山知恵子方に配達され、右秋山がこれを受取り、書留郵便物の受領を証する場合にも秋山知恵子が自分の印を用いて居り原告がこれにつき従来何等異議がなかつたことが認められる。これを以てすれば原告は原告宛の郵便物が右秋山知恵子方に配達され、同人が原告の代人となつて受取ることを暗黙に認めていたものと解するのを相当とする。しかるところ、当裁判所が真正に成立したと認める乙第一及び第二号証並びに原告本人の供述によると、本件の裁決書は、昭和二六年一一月二〇日書留郵便物として原告の住所宛に差し出され、翌二一日右秋山知恵子方に配達され、同人がこれを受取つたことが認められるので、たとえ原告が右秋山から本件の裁決書を受取つたのが同年一二月一七日であつたとしても、本件の裁決書は、それが右秋山知恵子方に配達され、同人がこれを受取つた日即ち同年一一月二一日に原告に交付されたものと認めなければならない。

してみると、原告は右裁決書の交付を受けた日即ち同年一一月二一日から三〇日以内に不服の訴を提起しなければならないのに、原告が本訴を当裁判所に提起したのは昭和二七年一月一五日であることは当裁判所に顕著であるから、本訴は法定の出訴期間を経過した後に提起された不適法なものとして却下せざるを得ない。

よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長 角村克己 菊池庚子三 吉田豊)

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